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手塚治虫傑作集「戦争と日本人」[2017/07/16 日 AM 07:44]

 祥伝社新書から「手塚治虫傑作選『戦争と日本人』」が出版されました。

 本書の制作意図が次のように書かれてあります。

 「手塚治虫が中学校(現在の高校)に入った年、日米は開戦しました。戦時下の日本で、手塚は軍事工場での勤労奉仕や大阪大空襲を経験します。そして、自らが体験した『戦争』の悲惨さを後世に伝えるべく、彼は戦争というテーマにした作品を数多く描いてきました。本書では、自伝的漫画「どついたれ」をはじめ、現在の日本を彷彿とさせる『悪魔の開幕』、原爆問題を扱った作品など、選りすぐりの九編を収録しています。現在、日本では戦争の記憶が風化し、平和の尊さについても鈍感になっています。戦争の足音が聞こえてきそうな今だからこそ、読んでほしい珠玉の短編集です。」

 解説は、政治学者、思想史家の白井聡さん。

 彼は、手塚治虫らの漫画についてこう書いています。

 「これらの『国民的』漫画作家たちが『国民的』と呼ばれることに誰も違和感を持たないのは、彼らの作品が体現してきた反戦ヒューマニズムこそが、戦後日本の国民的思想であるという暗黙の合意が成立したからであろう。」

 「戦後日本の場合、『内省』は巨匠たちに支えられ、長きに亘って持続してきた。手塚治虫も水木しげるも、ひたすら暗い、救いのない戦争漫画や実録的戦記物を描き続けた。その執念は、われわれ敗者であるがゆえ、現代戦争の悲惨さを虚心に見つめることができるのであり、それを世界に伝えることに普遍的意義があるとの確信に支えられていたはずだ。」

 白井さんは、その上で、現代の政治状況を以下のように分析しています。

 「そして、いままさに危機にさらされているのは、この確信である。あの戦争の体験に普遍性を見い出すという戦後日本人の文化的合意には、致命的な弱点がはらまれている。それはすなわち、体験は時間的経過によって必ず風化することである。普遍性と体験は、究極的に相容れない。ゆえに実際、手塚治虫の世代が次々に鬼籍に入るのと並行するように、現代日本の政治は、『戦に強いことを国の誇りとするのは止めよう』という戦後平和主義の最大公約数的コンセンサスを投げ捨てようとしている。」

 白井さんは、さらにこう書いています。

 「原発を動かす力と同じ力が戦後社会を根底から覆そうとしている。憲法への非常事態条項の書き込みへの策動や、閣議決定による実質的な改憲(集団的自衛権の行使容認)、特定秘密保護法の成立、共謀罪といった一連の政策は、政権によるクーデターに等しい。戦後の自由民主主義の基盤は、日々掘り崩されている。それが行き着く先を描き出しているのが『悪魔の開幕』である。この虚無的な力がつくり出す社会がどんなものになるのか、それを創造してみることは思考実験ではない。」

 「悪魔の開幕」の一部を紹介しましょう。この作品は1973年。今から約50年前に作成された作品です。

  先生は、岡に政治状況を説明します。

 「岡くん 知ってのとおり 日本は3年前 いまの丹波内閣になってから戒厳令がしかれておる 国民は事由が束縛され 夜間は外出禁止 映画もテレビも 新聞まで検閲され 電話は盗聴され 手紙も開封される・・・なぜこんなことになったのか?」

 「丹波首相は、自衛隊をはっきり軍隊といいきり・・・国民のすべての反対をおしきって憲法改正をしてしまった。」

 「しかも!核兵器の製造にふみ切ったのだ-日本が中国やその他の国の圧力から東南アジアの勢力を守るという名目で!」

 「この三年間国民の反対運動はことごとく鎮圧されてしまった!」

 「何百万が官権に殺され罪を被せられた」

 「もちろん 野党は丹波首相の非常大権のもとで まるで手足をしばられた猫みたいなものだ・・・」

 「何年か前 韓国に金大中事件というのがあったな」

 「いまの日本はあの頃の韓国より数倍悪い!」

 白井さんは、最後にこう解説しています。

 「いま手塚治虫の戦争漫画を読むことは、正直なところ辛かった。われわれは、一つの時代の終わりに臨んでいるのか、それとも終わりをさらに繰り延べようとしているのか。その答えは間もなく出るだろう。」

 手塚さんの戦争漫画を読んで、「戦に強いことを国の誇りとするのは止めよう」との気持ちを強くしました。

 戦争体験が風化して「戦に強いことを国の誇りにしよう」とも言える安倍政権が憲法改悪を強行しようとしていますが、手塚さんが描く「悪魔の開幕」を許してはならないとの決意を新たにしました。

 安倍首相は、都議選の結果を真摯に受け止めて憲法改悪の強行を断念すべきです。

 手塚さんの戦争漫画を一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います。

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